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[特集:2012年生活を一新するサービス 3/3] Onlab代表「新サービスの開発現場は完全にエンジニアの売り手市場」

2011/12/27公開

 

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ここまでの新サービスを見ても分かるように、FacebookやTwitterといった、グローバルなソーシャルメディアの台頭とiPhone、iPad、Android端末などの高機能なスマートデバイスの普及によって、新しいWebサービスやアプリを生み出そうとする人が増えている。

加えて、こうした動きを後押ししているのが、「シードアクセラレーター」の存在だ。

シードアクセラレーターとは、短期育成型のインキュベーションのこと。資金の投資だけでなく、オフィス環境の提供やメンターによる助言、投資家へのプレゼン機会などを与えることで、ビジネスの「Seed(=種)」を持つ個人やチームの起業支援を行い、法人化後の株式で対価を得る。

そんなシードアクセラレーターの草分けである『Open Network Lab(以下、Onlab)』の代表である安田幹広氏に、新しいWebサービスの作り手たちを取り巻く環境の変化と、2012年以降の動向について、話を聞いた。

新サービス開発者なら、オープン化するインキュベーションの波に乗れ

――新しいWebサービスの作り手たちにとって、2011年はどのような年だったと言えますか?

株式会社Open Network Lab
代表取締役社長 兼
株式会社デジタルガレージ 取締役
安田幹広氏(@mikihiro_yasuda

ネットスケープ・コミュニケーションズを経て、デジタルガレージに入社。カカクコムCTO、取締役COOを歴任した後、2010年7月より、デジタルガレージにてグループCTOに。デジタルハリウッド大学院客員教授も務める

今年はまさにスタートアップス(=設立間もないベンチャー企業)育成の基盤が整備された年でした。

新サービスに関しては、特に「ジオ(位置情報)」+「ソーシャル」の組み合わせや、「インタレストグラフ」への関心が高かった。

Onlabを卒業したスタートアップスの中で言えば、位置情報サービスを使って共通の趣味や目的を共有できる『Wondershake』や『Compath.me』、個人の関心から新しい人的ネットワークを作る『Mieple』などがそうです。

スマートフォンに標準装備されているGPS機能と、Facebookにアカウントを持つユーザーのリテラシーの高さを活かしていることが、これらサービスの共通点ですね。

――最近の新しいWebサービスを作る人たちを取り巻く環境は、以前のものと比べ、どう変化しているのでしょうか?
ここ1~2年、スタートアップを支援する環境が急速に整備され、参入障壁が下がってきているのは確かです。

ワイコン

シードアクセラレーターの先駆け、Y Combinator(2005年設立)。『Dropbox』も同社に見出されたサービスの一つだ

事実、これまで日本でのベンチャー支援の担い手は、ベンチャーキャピタルやインキュベーターによるクローズドな環境下におけるOne on Oneでの投資・育成支援が中心でした。しかし、今その流れの一部は少しずつシードアクセラレーターに移行し始めています。

シードアクセラレーターが従来のベンチャーキャピタルやインキュベーターと異なるのは、育成環境自体がオープンだということ。いわばシードアクセラレーターとは、「プログラム参加者一同が一カ所に集まり切磋琢磨し合いながら頑張っていこうという仕組み」です。

シリコンバレーでは『Y Combinator』や『500 Startups』、ニューヨークでは『TechStars』と、数多くのシードアクセラレーターが、インキュベーションのオープン化の先頭に立っています。

――2000年代にあったベンチャー投資ブームのころと今では、どんな点が異なっているのでしょうか?
ベンチャーブームのころは、Webサービス一つリリースするのに多額の資金を必要としていました。しかし、今では開発環境のほとんどを、AmazonのEC2をはじめとするクラウドサービスやオープンソースで十分まかなえます。

将来の見通しが立たない段階で高額な物理サーバや商用ソフトを購入する必要はないし、SEOやバイラルマーケティングを行えば広告費さえ不要。Google Analyticsなどの無料ツールの充実でマーケティングコストに手持ちの資金をつぎ込む必要もなくなっています。

こうしたイニシャルコストの低下は、投資する側のリスクも大きく減らすことになり、やがてシードアクセラレーターが誕生する素地にもつながったと言えるでしょう。この点が2000年代初頭にわき起こったベンチャーブームと大きく違いますね。

2011年にまかれた新サービスのタネは、2012年一斉に花開く

かつては、ITへの理解が乏しいベンチャーキャピタルが、事業化の見通しが立つかどうか分からない段階で億単位の投資を行うケースもまれではありませんでした。しかし、今は少額の投資で大きな成果を出すことが可能な時代になっています。

実際、今なら2000~3000万円あれば1~2年にわたって3人程度の生活費と開発資金はまかなえますし、1社あたり投資額が少なくなれば当然投資先の数を増やせるため、以前なら見過ごされていたようなアイデアにも光が当たりやすくなっていますね。

一方、IT企業経営者やIPO経験者のエンジェルも増えており、投資側のITリテラシーも大幅に向上していることも、かつてのベンチャーブームとの大きな違いです。

すたうぃ

世界約200カ所で行われているStartup Weekend。54時間以内に新しいプロジェ クトや会社を立ち上げ、アイデアを競う

こうした環境の大きな変化が、スタートアップスたちがビジネスに参入する際の敷居を下げ、Webサービスやアプリ開発業界に起業家志望者を増やす一因になっています。

また、最近では、起業家志望者とエンジニア、デザイナー、投資家など、互いを必要とする人々が出合える場として『Startup Daiting』や『Startup Weekend』といったイベントも盛んに行われるようになっています。今までになく、個人や少数のグループが起業に踏み出しやすい状況になっていると言えますね。

――Onlabのプログラムに参加を希望するような、新サービスの担い手たちに、共通した傾向はありますか?
Onlabで言えば、参加希望者は20代の学生から40代の起業経験者までさまざまです。ただ、ひところに比べ、参加者の水準が上がっています。

というのも、以前はアイデアとチームだけでの応募が多かったのですが、最近では応募する段階ですでに半年なり1年なりの期間サービス提供に充て、一定のニーズをつかんだ上で応募してくるケースが増えてきているからです。

彼らの狙いは、グローバル市場で戦い抜くために自分たちをブラッシュアップすること。そもそもの視点が、以前とは違っていると感じます。

――こうした現状は、まだ新サービスの立ち上げにかかわっていない、その他大勢のエンジニアにとって、何を意味するのでしょうか?
多くのエンジニアにとって有利な状況になっている、ということですね。

スタートアップス同士の競争の激しさは、着想から開発までのリードタイムが短く、最新ツールを日常的に使いこなしているエンジニアに大きなアドバンテージを与えています。しかしその一方で、エンジニアが見つからないという相談を受けることが多いのも事実。

われわれのプログラムに参加しているスタートアップスの中には、定期的にシリコンバレーに渡ってY Combinatorや500 Startupsの参加者や卒業生、投資家と交流を深めている人もいます。また逆に、あちらのスタートアップスもほぼ毎週のように誰かしらが来日し、Onlabのような場所を訪ねてきます。積極的に踏み出せばチャンスは多いと思いますよ。

とはいえ、今働いている職場をすぐに退職するべきだということではありません。もしWebサービスやアプリ開発の分野での起業に興味があるなら、まずは先に挙げたStartup DaitingやStartup Weekendなどに参加してみるなど、手堅く人脈を拡げてみることから始めるのがオススメです。

こうした動きは、すでにWeb業界やアプリ開発の世界にいるエンジニアだけに関係する話ではなく、SIerで働くエンジニアにとっても飛躍のための好機となります。

2012年は、2011年にタネをまかれた多くの新サービスが花開く年になるでしょう。日本発の世界的ヒットを実現するサービスが生まれるかもしれません。

取材・文/武田敏則(グレタケ)、桜井 祐(編集部) 撮影/桜井 祐(編集部)

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