[特集:もしIT業界に女性が増えたら...2/3] 閑歳孝子「『男と女』という考え方を超越した、平等な世界になる」
2011/07/15公開
「Web業界の才女」として人気を集める彼女だが、本人は至って冷静にこう話す。
「わたしは、今でも自分のことをエンジニアだって思えてなくて(笑)」
理由は、コードを書くこと自体にこだわりがあるわけではなく、作りたいモノを作る必要性からコードを書いているから。では、「作りたいモノ」はというと...。
「ユーザーローカルは、主にインターネット向け解析ツールを提供している会社。その中で『ユーザーインサイト』や『うごくひと2』といったツール作成にかかわっています。最も心がけているのは、誰にでも簡単に使ってもらえること。すごくトンガったサービスを、ギークな視点で作っていくのもエンジニアの醍醐味なんでしょうけど、わたしの喜びは少し違うところにあるみたいです(笑)」
基本的に「前に出て行くタイプの人間じゃない」。それは今も同じ。けれども、あることをきっかけに仕事との向き合い方が変わった。
エンジニアって、何も"スーパーギーク"だけじゃない
「今から3年前。前の会社を辞めるころ、友だちと新しいサービスを作ったんです。個人の名前で作ったサービスだし、これをどう世の中に知ってもらえば良いのか分からなくて戸惑っていました。苦しまぎれに、自分が読んでいたブログの方にダメもとでメールをしたら、すぐに記事で取り上げてくれたり、取材していただいたりしたんです。このときに出会った人をきっかけに、その後もいろんな人と知り合うようになって」マイペースな雰囲気を持つ閑歳さん
「それまで、エンジニアというのはコードの美しさにこだわったり、皆に役立つモジュールやフレームワークを作ったりすることが最終形態だと思い込んでいました。イメージとしては、小飼弾さんのような"スーパーギーク"。『ああ、わたし、違うじゃん。そんなの無理じゃん』って(笑)。
でも、エンジニアでもある伊藤さんから学んだのは『どれだけ多くの人が待ち望んでいるサービスなのかが大事』、『より多くの人に知ってもらうための仕組み作りも重要』、『インターフェースもカッコ良さだけではなく、誰にでも使いやすいことが大切』といったこと。そういう視点のエンジニアがいてもいいんだ、と目からウロコでした」
女性が増えたら女性特有のサービスがきっと増える
Web業界に転職した直後はディレクター的役割が主だったが、いつのまにか自分でもコーディングに手を出すようになり、開発の仕事をするようになった。「前に出て、写真を撮られたり、インタビューされたりは、今も苦手」
それでも、前に出るメリットが分かってからは積極的になった。自分の手がけるサービスを知ってもらうきっかけが増えること、業界の動向を素早くキャッチできること、そしてプライベートでも付き合える楽しく刺激ある人たちと出会えることだ。
では、今のWeb業界の女性たちの状況をどう思っているのか?
本当は、技術があれば性別関係なく誰でも活躍できる業界。女性でも、少し前に出るだけで状況は大きく変わるはず
どうしても女性が増えてほしい、とまでは思わない。サービス開発に興味を持っている女性が、それを実現できない世界は問題だが、今の日本はやろうと思えば学べる環境がそろっているからだ。でも、増えていけば女性ならではのサービスやツールが増えて面白くなるとは思う。
「つい先日、妊娠中の友だちから陣痛アプリのことを聞きました。すごくシンプルなツールで、陣痛が始まったらその間隔を記録していくアプリ。こういうアプリって、さすがに女性じゃなきゃ思いつかないはず。
また、今までの私の周りにいた女性は、すごく抽象的ですが『愛』を大切にして仕事をする方が多かった印象です。愛というのは、ユーザーへの愛であったり、一緒に働くメンバーへの愛だったり、そしてプロダクトへの愛だったり。この愛情が、サービスを立ち上げて広める、というときにすごく力になると思う。
それから、女性の方がバランス感覚を持って物事を考える人が多いように思います。天才型というか、のめり込み型の多い男性よりも、もしかしたらサービスや事業の全体像を考えながら仕事を進められるかもしれませんね」
『誰にとっても』便利で使えるサービスを作りたい
最後に、もしも女性のエンジニアやプロジェクトリーダー、起業家がWeb業界に増えていったら、どんなことが起こるかを聞いてみた。「エンジニアの既婚率は確実に上がるでしょうね(笑)。うちはたまたま夫婦揃ってエンジニアですが、とてもおすすめですよ。家庭で技術的な話はほぼしませんが、たとえばTwitterで話題になっているブログやニュースについて、説明なしにいきなり盛り上がれる。会話がとにかく楽です。子どもがもしいたらネットの英才教育をしたいですね。そんな子どもたちが増えたら、どんな面白い世界になるのか、すごく楽しみです」
ただし結論は「男女の違いよりも個人の問題」。
「昔、尊敬するネット事業会社の経営者の方が言っていました。女性の経営者やプロデューサーは『女性ならではのサービス』を作ろうとしがちなのが少し残念だと。もっと性別が関係ない事業ドメインで活躍する女性が増えてほしいとおっしゃっていました。
そのことにすごく共感しましたし、だからこそ、わたし自身は『誰にとっても』便利で使えるサービスを作って育てていきたい、と思っています」
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